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横浜の占い師のオバちゃん
そう遠くない昔のことですが、横浜に何かの用事で出かけた時、デパート(どことは申しませんが)で買い物をして、なにげなくエレベーター脇の階の案内を見ていたら、7階で占いコーナーがあることがわかったので、少し時間もあるし、最近あまりいいこともないから、ちょっとみてもらおうかなと、立ち寄ったことがあります。
ふくよかな、少し品のあるオバちゃんが占いコーナーの一角にテーブルを出していて、そこで30分ほどみてもらいました。質問は、「今年・来年の運勢」「愛情運」といった人並みのものですが、返ってきた答えは、とりわけどうということもない月並みな、極めて平凡な人生模様で、そうですか、はあ、とうなずきながら、ぼんやりと頭の隅でオバちゃんの声を反芻していました。それでも、やはり将来のことが気になりますので、「これから先どうですかね」と訊いてみました。
そうすると、オバちゃんが、「あなた、60歳から素晴らしいよ!」と言うのです。九星という気学でいうと僕は八白土星なので、たしかに遅咲きのようなのです。といっても、そんな高齢になってから素晴らしい人生が開けても、はたして嬉しいのか嬉しくないのか複雑な気分です(60歳以上の人には申し訳ありません)。
「そうですか、はあ」と、気落ちしてその場を後にしたのですが、自宅に帰って、「何が60だよ。昔だったらとっくに死んでるよ」と、横浜の占い師の言葉を何とか否定する材料はないものかと、近くの本屋に立ち寄って占いの本を読みあさったのですが、調べた限りの占いデータを挙げると、僕は、B型、さそり座、八白土星、六星占術では火星人(+)なのです。これを見る限りでは、ろくなもんじゃないですね。マイペースのB型に、何を考えているんだかわけのわからない蠍座。これだけでも、昔、吉祥寺の美容室のきれいな店長に、最悪ですね、カラカラと笑われたことがあります。そして、奇人・変人といわれる火星人(+)。さらに、遅咲きの八白土星です。よくもまあこんな星の元に生まれて、どんな人間だろうと「これから先、僕は一体どうなるんだろう」と、柿の種を食べながら、こぶ茶をすすったものです。
といっても、根が楽天家ですから、茶をすすりながら、良いようにとるしかないと考えます。
B型というと、いい加減なフィーリング人間のように見られていますが、とある羊羹屋の販売員はすべてB型でそろえているということをきいたことがあります。お客さんに何を言われても、気にしない、つまり楽天家なんですね。物書きも結構B型が向いているのか、昔僕がいた専門誌の会社の編集長らはB型ばかりでした。蠍座は最後までやり遂げるという執着力は人一倍強いし六星占術の火星人(+)は物書きには向いているし、後は、遅咲きの八白土星ですが、これは、徳川家康がそうでした。確かに年齢がいってなさけない人生を送るより、年をとってから素晴らしい人生が開けたほうがいい、そう考えると「なかなかいい人生かも知れない」と妄想にかられながら、家康のような面持ちで「う~ん、やるしかないだろう」と思ったものです。