3. 熊ガールVS歩道橋女
趣味コンの恋活イベントの開始までまだ30分ほどありました。
早めに、会場となった貸し切りカフェに着いた真子さん。一体どんな人たちが来るんだろうかと緊張の面持ちでイスに腰かけていました。後輩のマナミさんからは電車が少し遅れるとスマホにメールが入っていました。
ふと目をやると、隣に同じ年くらいの黒の上下スーツのスレンダー美女が座っています。何もこんな地味な趣味コンに来なくてもオトコには不自由しないようなスタイリッシュ+クール&ビューティーです。
「熊坂熊子です」と、真子さんは満面の笑みで隣のスレンダー美女に挨拶します。
すると、スレンダーはキッと真子さんに顔を向け、「変わった名前ですね」と返します。
「いえ、まあ、ハンドルネームですけどね。アッハッハ」たぶんそれで打ち解けて会話が弾むと真子さんは思ったのです。
すると、スレンダー美女は「白澤マリ」と名乗ります。
「今日はどんな方たちがいらっしゃるんでしょうね。白澤さんはスタイルもいいし、結構モテるんじゃないんですか」と真子さんはさりげなく聞きます。
もしかしたら、趣味コンに来た男たちをこのスレンダー&スタイリッシュ女にごっそり持っていかれるんじゃないかしら、といういじましい思いに駆られたのです。敵を知り己を知らば百戦百勝危うからずで、まず相手方の情勢をつかむことが大切です。
「ええ、でも周りには小学生やおまわりさんくらいしかいませんし」真子さんの質問に、スレンダー白澤は物憂げに答えます。
< 何か、複雑な事情でもあるのかしら >と真子さん。
「白澤さんの趣味はどんなことなんですか」そう真子さんがたずねると、白澤スレンダーは、
「歩道橋の上で人を眺めることです」と答えます。
< ほ、ほどうきょうのうえで、なんだって・・ >真子さんは「え、なんですか」と聞き返します。
「人の観察です。歩道橋の上から」白澤スレンダーがクールに答えます。
< それのどこが、なにが面白いのか。あのルーピーマナミはたこ焼き研究が趣味だが、こいつも同類か >と真子さんは激しく動揺します。
「雨の日も風の日も、、ですか」
「ええ、台風以外は」
「歩道橋の上で、誰か探しているとか」
「ええ、亡くなった人を」
< ひえ~、こいつは本格的なサイコかよ >と急に、真子さんの頭の中でサイレンが鳴り始めます。
「楽しいですか」
「ええ、まあ、小学生とかおまわりさんとかたくさん集まってきますし、寂しくはないです」
「白澤さんはどんな人が好みなんですか」
「オジさん系ですかね」
< よかった。パーフェクトにかぶらない >と、そこで真子さんは薄い胸をなでおろします。このスレンダーとまともに戦ったら勝てないことは目にみえています。
会場となったカフェに参加者が集まり、周囲がざわついてきました。
趣味コンには常連の人も初めての人もいろいろ入り混じっています。男女30人、それぞれ半々の予定です。ぐるりと見渡すと、男子はさわやかイケメンもいればそれなりの人もいます。その他、マッドマックスふうとかオタクふうとか若ハゲとか、ここに何しに来たんだかわからないような人もいます。
真子さんのタイプは手乗り文鳥のようなかわいい系男子ですが、それなりに仕込めばそこそこになるかも知れないと思うようなオトコも近場にいたりして、ない胸も膨らみます。
すると、「あの人はやめておいたほうがいいですよ」と真子さんの視線の先をみながら白澤スレンダーがそっと小声でささやきます。
歩道橋の上からの人間観察で鍛えたクール白澤の見定めです。説得力がなくもありません。
「それよりも、あっちの人のほうがいいですよ」とスタイリッシュ白澤。みると、来る場所を間違えたんじゃないかしらというような老け顔のオッサン男子を目で指しています。
< はい、スルー >と真子さんは即座に無視します。このスレンダーにはあれが王子さまに映るんかしらと真子さんは不思議でなりません。なにはともあれオトコの好みが真逆であることがはっきりして、あらためて真子さんはない胸をなでおろします。
みなさん、本日はこの恋活イベントにお集りいただきありがとうございます。 主催者からイベントの開催を告げる挨拶がはじまりました。
と、その時、ドアをそっと開けてマナミさんがバツが悪そうに入ってきました。
「すみません、先輩、遅れちゃって」
「たこ焼き研究家で後輩の後藤マナミです」と真子さんは白澤スレンダーにマナミさんを紹介します。
「白澤マリです」とスレンダーガールも答えます。
「たこ焼きではなくて、たい焼きのほうですけどね」とマナミさんが返すと、
< どっちでもいいじゃない、そんなこと >という冷ややかな目でジッと真子さんがマナミさんをみつめます。
ざわつく会場を見渡しながら、「今日はシンセイいますかね」とマナミさんが真子さんに小声で聞きます。
「ざっとみて、まあカセイね」とそれに真子さんが答えます。
すると、スレンダー&スタイリッシュの白澤が、「いや、3人ほどいます」とクールに返します。
< こいつは私たちの会話の意味がわかるのかよ・・・た、ただものじゃない >
さすがに、熊ガールもこの時ばかりは足がすくみました。
ワンゲル部の高原合宿で熊とはち合わせした時のような衝撃でした。
4. 趣味コン・フリータイム
早めに、会場となった貸し切りカフェに着いた真子さん。一体どんな人たちが来るんだろうかと緊張の面持ちでイスに腰かけていました。後輩のマナミさんからは電車が少し遅れるとスマホにメールが入っていました。
ふと目をやると、隣に同じ年くらいの黒の上下スーツのスレンダー美女が座っています。何もこんな地味な趣味コンに来なくてもオトコには不自由しないようなスタイリッシュ+クール&ビューティーです。
「熊坂熊子です」と、真子さんは満面の笑みで隣のスレンダー美女に挨拶します。
すると、スレンダーはキッと真子さんに顔を向け、「変わった名前ですね」と返します。
「いえ、まあ、ハンドルネームですけどね。アッハッハ」たぶんそれで打ち解けて会話が弾むと真子さんは思ったのです。
すると、スレンダー美女は「白澤マリ」と名乗ります。
「今日はどんな方たちがいらっしゃるんでしょうね。白澤さんはスタイルもいいし、結構モテるんじゃないんですか」と真子さんはさりげなく聞きます。
もしかしたら、趣味コンに来た男たちをこのスレンダー&スタイリッシュ女にごっそり持っていかれるんじゃないかしら、といういじましい思いに駆られたのです。敵を知り己を知らば百戦百勝危うからずで、まず相手方の情勢をつかむことが大切です。
「ええ、でも周りには小学生やおまわりさんくらいしかいませんし」真子さんの質問に、スレンダー白澤は物憂げに答えます。
< 何か、複雑な事情でもあるのかしら >と真子さん。
「白澤さんの趣味はどんなことなんですか」そう真子さんがたずねると、白澤スレンダーは、
「歩道橋の上で人を眺めることです」と答えます。
< ほ、ほどうきょうのうえで、なんだって・・ >真子さんは「え、なんですか」と聞き返します。
「人の観察です。歩道橋の上から」白澤スレンダーがクールに答えます。
< それのどこが、なにが面白いのか。あのルーピーマナミはたこ焼き研究が趣味だが、こいつも同類か >と真子さんは激しく動揺します。
「雨の日も風の日も、、ですか」
「ええ、台風以外は」
「歩道橋の上で、誰か探しているとか」
「ええ、亡くなった人を」
< ひえ~、こいつは本格的なサイコかよ >と急に、真子さんの頭の中でサイレンが鳴り始めます。
「楽しいですか」
「ええ、まあ、小学生とかおまわりさんとかたくさん集まってきますし、寂しくはないです」
「白澤さんはどんな人が好みなんですか」
「オジさん系ですかね」
< よかった。パーフェクトにかぶらない >と、そこで真子さんは薄い胸をなでおろします。このスレンダーとまともに戦ったら勝てないことは目にみえています。
会場となったカフェに参加者が集まり、周囲がざわついてきました。
趣味コンには常連の人も初めての人もいろいろ入り混じっています。男女30人、それぞれ半々の予定です。ぐるりと見渡すと、男子はさわやかイケメンもいればそれなりの人もいます。その他、マッドマックスふうとかオタクふうとか若ハゲとか、ここに何しに来たんだかわからないような人もいます。
真子さんのタイプは手乗り文鳥のようなかわいい系男子ですが、それなりに仕込めばそこそこになるかも知れないと思うようなオトコも近場にいたりして、ない胸も膨らみます。
すると、「あの人はやめておいたほうがいいですよ」と真子さんの視線の先をみながら白澤スレンダーがそっと小声でささやきます。
歩道橋の上からの人間観察で鍛えたクール白澤の見定めです。説得力がなくもありません。
「それよりも、あっちの人のほうがいいですよ」とスタイリッシュ白澤。みると、来る場所を間違えたんじゃないかしらというような老け顔のオッサン男子を目で指しています。
< はい、スルー >と真子さんは即座に無視します。このスレンダーにはあれが王子さまに映るんかしらと真子さんは不思議でなりません。なにはともあれオトコの好みが真逆であることがはっきりして、あらためて真子さんはない胸をなでおろします。
みなさん、本日はこの恋活イベントにお集りいただきありがとうございます。 主催者からイベントの開催を告げる挨拶がはじまりました。
と、その時、ドアをそっと開けてマナミさんがバツが悪そうに入ってきました。
「すみません、先輩、遅れちゃって」
「たこ焼き研究家で後輩の後藤マナミです」と真子さんは白澤スレンダーにマナミさんを紹介します。
「白澤マリです」とスレンダーガールも答えます。
「たこ焼きではなくて、たい焼きのほうですけどね」とマナミさんが返すと、
< どっちでもいいじゃない、そんなこと >という冷ややかな目でジッと真子さんがマナミさんをみつめます。
ざわつく会場を見渡しながら、「今日はシンセイいますかね」とマナミさんが真子さんに小声で聞きます。
「ざっとみて、まあカセイね」とそれに真子さんが答えます。
すると、スレンダー&スタイリッシュの白澤が、「いや、3人ほどいます」とクールに返します。
< こいつは私たちの会話の意味がわかるのかよ・・・た、ただものじゃない >
さすがに、熊ガールもこの時ばかりは足がすくみました。
ワンゲル部の高原合宿で熊とはち合わせした時のような衝撃でした。